
「回遊動線」は本当に必要?メリット・デメリット解説
SNSや住宅雑誌を開けば、必ずと言っていいほど目にする「回遊動線」という言葉。行き止まりがなく、ぐるぐると家中を回れる間取りは、家事の時短になりそうでとても魅力的ですよね。
最近、宇都宮市で新築注文住宅をご検討中のお客様とお話ししていても、「キッチンから洗面所へ抜けられるようにしたい」というご相談をよくいただきます。
ただ、多くの図面を見てきた広報担当の私個人としては、ふと立ち止まって「その通路、本当に毎日通りますか?」と、心の中で優しく問いかけることがあります。
「便利そう」の裏側に隠れているもの
回遊動線は、確かにスムーズな移動を助けてくれます。でも、通路を作るということは、その分「壁」が減るということでもあります。
壁が減ると、実は家具を置くスペースが限られたり、スイッチやコンセントを設置する場所がなくなったりすることがあります。また、扉が増える分だけコストも少し上がります。
「なんとなく便利そうだから」という理由だけで通路を増やすと、結局その前には荷物が置かれ、いつの間にか「通り抜けられない通路」になってしまうケースも、実は少なくありません。
宇都宮の冬と、間取りの関係
私たちが拠点を置く宇都宮市は、冬の寒さが厳しい地域です。 そのため「いえものがたり」では、宇都宮市で高性能住宅(一年中、家中が心地よい温度で保たれる家)を建てることを大切にしています。
実は、間取りと家の性能(断熱や気密)は切り離せない関係にあります。
例えば、扉のない回遊動線をたくさん作っても、家全体の断熱がしっかりしていれば「廊下が寒くて通りたくない」ということはありません。逆に、家中が暖かいからこそ、無理に回遊させなくても、最短距離のシンプルな動線だけで十分に快適に暮らせる、という考え方もできるのです。
数値上の性能を競うのではなく、冬の朝にキッチンに立つのも、お風呂上がりに脱衣所へ行くのも、どこにいても「あぁ、気持ちいいな」と感じられる。そんな「器」としての住まいを一緒に見つけていきたいと考えています。
暮らしの「器」を整えるために
間取りは、いわばご家族の「暮らしを包む器」です。
流行のスタイルも素敵ですが、一番大切なのは、そこに住むご家族がどんな朝を迎え、どんなふうに夜を過ごすかという、リアルな日常です。
- 洗濯機を回しながら、朝食の準備をする?
- 買い物から帰って、すぐに荷物を置きたい?
- 家族がすれ違うとき、どんな距離感でいたい?
そんな小さな習慣を一つひとつ紐解いていくと、自ずと必要な動線が見えてきます。それは、もしかしたら回遊動線ではない、もっとシンプルな形かもしれません。
家づくりに、たったひとつの正解はありません。 十人いれば、十通りの「心地よさ」があります。
「みんなが良いと言っているから」ではなく、「自分たちが一番自然体でいられるのはどんな形だろう?」と、ご家族でゆっくりとお話ししてみてください。
その対話の時間が、何年経っても「この家でよかった」と思える、誠実な住まいづくりに繋がっていくのだと信じています。